古代ノルドの試練を越えて、遺跡の再奥へと進んでいく。
「ようやく中央の間にたどり着きそうですね!」
「ここまで大変だったなぁ…。 何体のドラウグルを倒したか覚えてないよ」
古代のノルドの遺跡は怪物と罠でいっぱいだとは聞いていたが、これほどとは。
しかも、そんな危険な遺跡が人里近くにあるというのだから驚きである。

「向こう側が明るくなってる。 昼飯を食った場所みたいに、外から光が差し込んでるのかな?」
「いよいよ、って感じですね。 行ってみましょう!」
「わぁ…。 なんて素敵なの…!」そこはこれまでで一番広い空間で、とても美しい場所だった。
壁から噴出した水は段差を下りながら天井から差し込む光を反射し、辺りを薄明るく照らし出している。
そんな幻想的な光に苔生した石段が照らし出され、さながら庭園のようだ。
そして一際目立つのは、石段の頂上にある大きな壁。
壁には一面に紋様が描かれており、この場所が神聖な場所であることを物語っている。
「すごいわね…! こんなのは見たことがないわ…!」
間違いない、ここが中央の間。 ブリークフォール墓地の『聖域』だ。
「見て! 宝箱があるわよ!」大きな壁の前まで登ってみると、祭壇のようなものが設置されていた。
近くに宝箱もある。 ドラゴンストーンはあの中だろうか?
「よし、手分けして探そう!」
俺たちは祭壇の周辺や宝箱の中身を探った。
宝箱の中身は符呪された防具や宝石などで、かなりの価値がある物だった。
だが、価値だけを見れば『信じられないほどすごい』というほどのものではない。
「確かに宝物なんだけど…思ったより、大したことはないのね」
「そうですね。 そうれに、肝心のドラゴンストーンがどこにも見当たらないです…」
ファレンガーさんからの情報によれば、ドラゴンストーンは中央の間にあるはず。
この場所のどこかに隠されているのだろうか? それとも、探している場所自体が間違っているのだろうか?

ゴォォ…「…?」
ドラゴンストーンの隠し場所について悩んでいると、ふと背後から風を感じた。

「風…いや、声か…?」
その声は、紋様の描かれた壁から響いてくる…と感じた。
そう、
『聞こえる』というより、
『感じる』のだ。
「(この声、俺を呼んでいる…?)」
俺は引き寄せられるように、壁へと近付いた。
「Fus」俺の中で、声が響いた。
これは言葉か…? どういう意味なのだろう?
「シンさん、どうかしましたか?」「…えっ?」
沙に話しかけられて我に返った。 何だか頭がぼんやりする。
今のは一体なんだったんだ…?
「大丈夫ですか? 疲れたなら、少し休んだほうが…」
「…? ご、ごめん。 ちょっとこの壁に夢中になってたんだ。 疲れているわけじゃないから心配ないよ」
「ここが聖域なら罠はないと思うけど、注意を怠っちゃダメよ?」
「ああ、そうだな。 気をつけるよ」
どうやら彼女たちには、今の『声』が聞こえていなかったらしい。
一体、あの声は何だったんだ?
そして、なぜ俺はそれを『隠した』のだろう…?
バンッ!「!?」
突然、背後にあった棺の蓋が弾け飛んだ。
「ウワサをすれば、ですね!」
「もうあのヒモノ、飽きてきたわ」
棺の中から、ゆっくりと人影が立ち上がる。
「…ヴォラーン!」
ドラウグルだ!だが、これまで戦ってきたドラウグルと少し違う気がする。
古代の戦士の中でも選りすぐりの戦士をベースに作られたドラウグル、といったところか?
「これまでと違って相手は一人です。 一斉に攻撃すれば!」
「そうですね。 私とメルラさんで陽動をしかけて、シンさんと沙さんの魔法で一気に仕留めましょう!」
先ほどまでは数で押されることが多かったが、今度はこちらの数の方が上だ。
全員で一気にかかれば、どんなに強い戦士だろうと対処は難しい。
一撃で倒せなくとも、隙さえ生じればこっちのものだ。
「よし…みんな、一斉に…」
俺たちが攻撃に入ろうとした瞬間、ドラウグルが妙な仕草を見せる。
息を大きく吸い込むように、上体を仰け反らせ…
そして…
「フォス…ロ…ダーッ!!」
ガシィッ!!「がっ!?」
「ぐっ…何だ…今のは…?」
ドラウグルが叫んだ直後、強烈な衝撃が俺たちを襲った。
吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた俺は、体が動かなくなる。
…呼吸がままならない。
背中を強打したせいで、肺が麻痺したのだろうか…?
「ア…マメ…沙…メルラ…ちゃん…?」
彼女たちの姿が見えない。 どこに行ってしまったんだ?
みんな、無事なのか…?
彼女たちを…守らなきゃ…
「ソブンガルデ・サラーン!」仲間の無事を確認する間もなく、ドラウグルが襲い掛かってきた。
両手剣を大上段に構え、俺の脳天目掛けて振り下ろそうとしている。
ガキィッ!!「…ぐぅっ!?」
間一髪、明王が刃を止めた。
普通の剣なら刃ごと断ち切られ、俺の頭は叩き割られていただろう。
だが、ドラウグルの猛攻は止まらない。
俺の体を断ち切ろうと、青白く輝く古代ノルドの大剣が唸りあげる。
ガキィッ! ギィンッ!!剣と剣とがぶつかり合う音が何度も鳴り響く。

「(…! いた!! みんな、無事なのか…!?)」
自分の命すら危うい状況だが、彼女たちが階段の下に倒れているのを目の端で捉えた。
わずかだが、体が動いている。 大丈夫、死んではいない。
彼女たちの怪我の程度はわからないが、急いで手当てしなけば。
「(でも、このまじゃ…)」
だが、現実はそんな余裕さえ与えてはくれない。
凄まじい力に圧倒され、紙一重で防御するのが精一杯だ。 反撃の糸口すらつかめない。
「くそっ…たれェッ…!!」脳裏に、敗北と、死が過ぎる。
俺は、こんなところで終るのか…?
「ファズ! パーク! ディノク!」仲間の命すら守れず?
自分の正体すらもわからないまま?
俺はただ、自由でいたかっただけなのに…!
「クレン・ソザール!」そんなの、あんまりじゃないか…!!
「ボログ・アーズ、マール・リーア!」
「…ッ」
どういうわけか、俺の中に怒りに似た感情が膨れ上がり始めた。
何やら無性に腹が立つというか、苛立つというか。
上手く表現できないが、とにかく『気に入らない』のだ。
こいつには負けたくない。そんな理不尽、ありえない…。 そんな不条理、あってはならない…。
そんな不公平、
誰が許せるものか…!「…ッ!!」
血液が逆流し、筋肉が震える。 そんな感覚が、全身に奔っていく。
恐怖は吹き飛び、体の痛みも感じなくなる。
強い想いは、力を呼び覚ます。
「ダニーク・ケンドヴ!!」「へっ…うるせぇよッ!!」
「グゥッ!?」「お前なんかに…」
「負けてたまるかぁッ!!!!」
血潮が滾り、命が燃える。魂が、猛る。
次回予告
第20話 決着! 古代の戦士と手向けの花。
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テーマ:Skyrim - ジャンル:ゲーム
- 2015/12/18(金) 03:26:13|
- スカイリムRP シン
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| コメント:2
こ、これはシン君いよいよ覚醒でしょうか…!?
そして言葉の壁で起こった事を彼女達に黙っていた理由も気になりますね…次回も楽しみにしていますъ(`・ω・´)
- 2015/12/18(金) 19:34:42 |
- URL |
- magmel #-
- [ 編集 ]
>magmelさん
はい。本気出しました。
第1話で本気出すと言いながら、19話にしてやっと…。A;´Д`)``
このまま順調に行けば「いよいよ」ですね。
しかし、彼は「はぐれ魔術師」。物事が素直に進まない運命にありますw
ただ、進む道は真っ直ぐです。右に左に彷徨いながらも進むべき道を歩み続けるのも、また運命だったりします。
いずれ、彼が「(無意識に)黙っていた」理由もわかってきます。
その理由は、彼がここにいる理由にも関わってきますので、注目していてください(A`*)b
- 2015/12/19(土) 06:25:06 |
- URL |
- シン #-
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