「うおぁぁぁあああーッ!!」ドラウグルの両手剣を弾き飛ばし、一気に懐へと飛び込む。
力強い脚で踏みとどまったドラウグルだが、振りの遅い両手剣では反撃が間に合わない。
「遅いっ!!」
ザンッ!両手剣の一撃が来る前に、こちらの攻撃がドラウグルの胸を捉えた。
横一文字になぎ払った刃は、鎧を大きく切り裂く。
「でぇいっ!!」続け様の斬撃がドラウグルの鎧を次々と切り裂いていく。
装甲で刃を受け止めようものなら、鎧ごと切断する勢いだ。
「ヌゥッ!?」剣の切れ味に気が付いたのか、ドラウグルは防御をやめ、刃を回避し始めた。
やはりこのドラウグル、只者ではない。
剣術は一流の戦士のそれだ。
「フンッ!!」俺の攻撃をかわしたドラウグルは、その一瞬の隙に反撃してきた!
ザシュッ!!「ぐっ…!?」
両手剣の切っ先が、俺のわき腹をわずかに掠める。
傷口は小さい。 だが、麻痺の毒でも盛られたかのように感覚が鈍った。
「(氷の符呪か…!!)」
俺と古代の戦士の戦いは、五分と五分だ。

「(あの重い剣をまともに喰らったら…確実に死ぬ…!
でも、重い分だけ…攻撃は遅い。 …勝機はある!)」
攻撃をかわした瞬間に踏み込んで、ヤツの真心を捉える。
そして、火炎魔法で一気に焼き尽くすんだ…!
「ソブンガルデ・サラーン!」ドラウグルの戦士は両手剣を大上段に振りかぶると、そのまま力いっぱい振り下ろした。
ズガァッ!!ノルドらしい、豪快な一撃だ。
刃は石畳を叩き割り、地面に深々と突き刺さっている。 紙一重で回避できたが、喰らえばひとたまりもなかっただろう。

一撃の破壊力は大した物だ。 だが、その分隙も大きい。
俺は攻撃を避けた勢いをそのままに、体を捻りながら明王の刃を水平に構えると、切っ先をドラウグルの胴体一点に向けた。
「ヌゥッ!?」俺の動きを察知したドラウグルは反撃に出ようとするが、石畳に突き刺さった刃はすぐには抜けない。
無防備な胴体が俺の前にさらされる。
「もらった!」
ドスッ!!!「グワッ!?」至近距離からの突きが、ドラウグルの胸を捉えた!
刃は完全に体を貫き、背後の壁に突き刺さる。
「終わりだ…っ!!」
「グゥッ!?」俺は身動きのとれないドラウグルの顔面を左手で掴むと、集中したマジカを一気に解放した!!
「地獄に帰りやがれッ!!!」紅蓮の炎は鎧の内側から一気に燃え広がり、ドラウグルの体を一瞬で焼き尽くした!

「ハァ…ハァ…俺の…勝ちだ!」鎧の内側から燃やされたドラウグルの体は、完全に炭化していた。
気の遠くなるような年月をこの場所で過ごしてきた古代の戦士は、今まさにソブンガルデへと旅立ったのだ。
「うっ…」
強烈な疲労と痛みが全身を襲い、その場で膝を突く。
戦いの緊張感で、痛みを忘れていたようだ。
「みんなは…無事か…!?」
「シンくん!」俺を呼ぶ声がして振り向くと、メルラちゃんが階段を登ってくるのが見えた。
アマメと沙も一緒だ。
よかった、みんな無事だった!!
「みんな、大丈夫か!? 怪我は?」
「ええ、ちょっと手足を擦り剥いたけど、たいした怪我じゃないわ」
「よかったぁ…。 かなり高いところから落ちたから、心配してたんだよ」
どうやら、落ちた場所が砂地だったらしい。 おかげで、軽傷ですんだようだ。
もし石畳に叩きつけられていたら、3人とも命が危なかっただろう。 幸運だった。

「シンくんこそ、怪我は? …って、お腹切られてるじゃない!? 早く止血しないと!」
「ん? ああ、大丈夫。 ただのかすり傷ぅぅぅぅうう…ゴフっ」
「きゃーっ!? シンさん!!?」この後、メルラちゃんと沙による手際の良い手当てによって、失血死は免れた。
痛い想いはしたが、美女たちによる献身的な手当て、そしてアマメの柔らかい膝枕で休息というご褒美。
頑張った甲斐があった。
「これがドラゴンストーン…!」「ようやく見つかったわね! これで目標は達成ね!」
ドラウグルが眠っていた棺を調べてみると、中からドラゴンストーンが見つかった。
これでドラゴンストーンと金の爪の両方がそろった。
「あとはそれぞれの依頼人に届ければ任務完了ですね!」
「そうだね。 よし、戻ろうか!」
目的のものは手にいれた。 後は戻るだけだが、ここで気を緩めるわけにはいかない。
止めておいた罠が何らかの拍子に再び動き出したら、大惨事になりかねないからだ。

「ん? ちょっと待って! ここ、まだ先があるみたいよ?」
階段の先を眺めていたメルラちゃんが、階段が上へと伸びていることに気が付いた。
どうやらこの壁の先からさらに登ることができるようだ。
目当てのものは手に入れたし、もう少し探索してみることにしよう。
「…? 行き止まりですね」
ところが、階段を登った先は行き止まりだった。
壁に備え付けられた松明の下には怪しげな台座が設置されており、台座の上にはレバーがある。
「その台座はなんでしょう? …レバー?」
「また罠…じゃないわよね?」
「周りにそれっぽいものはないし、多分大丈夫。 引いてみるよ?」
ゴゴゴゴ…レバーを引くと、目の前の岩壁が動き出し、通路が現れた。 隠し通路だ!
「…すんなり開きましたね。 これまで罠ばかりだったのに」
「聖域に罠はさすがに野暮だと思ったのかも。 古代ノルドは結構信心深い人たちだったのかもね」

「ここは…」
隠し通路を抜けると、かがり火が灯る明るい部屋に出た。
灯りに照らされた場所には祭壇があり、頭蓋骨が安置されている。 これは墓標だろうか?
「もしかして、この人がこのお墓の…?」
「そうみたいね。 罠とドラウグルばかりだったから忘れそうだったけど、ここってお墓なのよね」
祭壇と頭蓋骨の周囲にはたくさんの花が供えられていた。
花すでに乾ききっていたが、花びらの色がまだ残っている。 特殊な加工をされた花なのかも知れない。
お供えの花にすらこれほどの手間をかけるとは、とても手厚く葬られた人物だったのだろう。
「仕事とはいえ、騒がせちゃったよな。 …よし!」


「白い花…キレイですね」
「ああ。 ここに来る途中で採取した綿の花だよ。
お供えや贈り物にする花じゃないけど、安心して眠ってるところを邪魔しちゃったお詫びにね」
俺は花を供えると、墓の主に両手を合わせた。
「たしかに…彼らにとって、私たちはただの墓荒らしですね」
「そうね。 みんなでお祈りしておきましょう。 この人が安らかに眠れるように」
彼女たちも、俺に続いて祈りを捧げた。

「これは外の光? あそこが出口みたいね!」
墓標のあった部屋から通路を辿ると、すぐに外の光が差し込んできた。
月の光だ。 どうやらもう夜になってしまったらしい。
「出口があってよかったです。 入り口に戻っていたら夜が明けていたところでしたね」
「あ~…お腹空いた! 帰ってご飯にしましょ!」
俺たちは洞窟を抜け、遺跡を後にした。

ブリークフォール墓地に静寂が戻る。
花に囲まれた墓の主は、再び静かな眠りについた。
もはや頭蓋骨だけの姿ではあるが、心なしかその表情は、優しく微笑んでいるようにも見えた。

次回予告
第21話 次なる冒険! 女と縁と、ヒキコモゴモ。
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テーマ:Skyrim - ジャンル:ゲーム
- 2015/12/25(金) 03:03:18|
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