「うおぉぉぉっ! 当たれぇぇぇッ!!!」衛兵たちが一斉に矢を放つ。
しかし、凄まじい速度で空を舞うドラゴンには、狙いを定めるのすら難しい。
よく訓練された衛兵たちでも、数本の矢を命中させるのがやっとだ。
だがそれらも、凄まじい飛行速度と分厚い鱗に阻まれ、体に突き刺さることはなかった。
「クソ! 何本かは当たったが…全部弾かれちまってる!!」
「なんて分厚い鱗だ!」
そう、ドラゴンの全身を包む鱗である。
鋼鉄の鎧のように頑丈で、革の鎧のように柔軟な鱗で全身を覆うドラゴンは、とんでもない防御力を持っていたのだ。

矢の嵐をやり過ごしたドラゴンは、塔の上空で旋回したかと思うと、一気にこちらへ向かってきた!
衛兵たちが一斉に緊急退避する。
「!! く、くるぞ!? 逃げろーッ!!」
ズドォォォンッ!!!!「うわっ!?」
ドラゴンが着地した瞬間、衝撃と爆風で土煙が上がった。
一瞬の静けさの後、目の前を覆う土煙が風で流されると、そこに鱗を夕日で赤く染めた、ドラゴンがいた…!
「ほう…同胞の気配を感じたかと思えば…。
勇敢だな、小さきドヴァーたちよ。 定命の身で、このミルムルニルに挑むか…」「!? しゃべった!?
今、ドラゴンがしゃべったのか?」
「言葉を…? ドラゴンは、私たちと同じように会話ができるというの…!?」
「我らは全ての頂点を自負する種族だ。 この程度、造作もなき事。
しばらく見ぬうちに、我らの力を忘れたか?」…驚いた。
ドラゴンは、ただの巨大な獣などではなかったのだ。
俺たちと同じ言葉で会話ができる時点で、少なくとも、巨人やファルマーより高い知性があると言える。
しかもコイツは、自身の名前を名乗った。
つまり、自と他を名前で区別し、認識する文化を持っているということだ。
「よかろう。 お互い、久しぶりの戦いだ。
真のドヴァーの力、その身をもって思い出すがいい!」ブワァッ!!!ミルムルニルと名乗ったドラゴンが、空を覆わんばかりの大きな翼を広げた。
次の瞬間、強烈な風が巻き起こり、目の前にいたはずのミルムルニルの姿が消えていた。
「グオォォォォオオオッ!!!!」「従士様! 上です!」
「あの一瞬で、あんな高さに…なんて力強い翼なの…?」
アイラちゃんの声で全員が空を見上げると、そこには再び大空を舞うミルムルニルがいた。
これがドラゴン!
何という…圧倒的な存在だろうか…!!
その場の全員が、同じことを考えていた。
「(…勝てるのか? こんな怪物に…!!?)」
「落ち着け! 皆、もう一度矢を放つんだ!」ドラゴンの強さに呑まれそうな俺たちに、シャールさんが喝を入れる。
「ただ狙うだけではダメだ! ヤツが『こっちへ向かっているとき』を狙って矢を放て!
それなら、きっとあの鱗を撃ち抜けるはずだ!!」
「…!! いい作戦ね。 衛兵! もう一度やるわよ!」
「よ、よしッ!」
シャールさんの指示を受けて、衛兵たちが再び矢を構える。
なるほど、ドラゴンが突進してくる力を利用するわけか!
ドラゴンが進んでいる方向を狙って矢を放っても、矢尻の切っ先が触れた途端、矢が横に滑ってしまう。
しかし、正面に向かい合って放てば、矢の勢いにドラゴン自身の勢いとが合わさり、強烈な貫通力を生み出すはずだ。
「全員、構えっ! ……撃てーッ!!!」イリレスさんの号令で、衛兵たちが再び矢を放つ。
放たれた矢は、こちらへ向かってくるドラゴンに向けて、一気に向かっていった!
ヒュヒュヒュヒュッ…「!? グオォッ!?」空中のミルムルニルが僅かに怯んだ!
よく見ると、体の数か所に矢が刺さっている!! やった!作戦は成功だ!
「見たわね! 私たちの武器でも、ヤツを傷つけることはできるのよ! …勝機はあるわ!!」
「勝利か、ソブンガルデだッ!!」
「今日がお前の最期だ! ドラゴン!」
勝機を見出し、衛兵たちは奮い立った。
鉄壁の防御を破られたミルムルニルは何とか矢を回避しているが、それでも少しづつ体に刺さる矢は増えていく。
だが、その眼からは、己の強さへの自信は全く失われていなかった。
「やるな、定命の者たちよ。 小さきドヴァーですらないお前たちが、我が鱗に傷をつけるとは!
だが…我が力はこんなものではない!」その巨体を翻し、ミルムルニルがこれまでと少し違った動作を見せる。
何だ? 何をする気だ!?
「ヨル…トール…シュルッ!!」ゴォォォォォウッ!!!!「うわあぁぁぁーっ!?」
ドラゴンの咆哮にも似た叫びと共に、紅蓮の炎が周囲を包み込んだ!
炎はあっという間に瓦礫や地面を真っ黒に焼き焦がしていく。
数人の衛兵が炎に巻かれ、苦しみにもだえて地面を転がった。
仲間の救助で何とか消火されたが…火傷が酷い。 あの体では、戦闘は不可能だ。
「今のは…ファイアブレスの
シャウトか!!」
「シャウト? なんだそれ!?」
「声を発することで発動する魔法のようなものです。
元々、ドラゴンが使う秘術だったと聞いていましたが…どうやら、本当のようですね…!」
シャウト!そうか、これが叫び声とともに魔法を放つ攻撃の正体!!
遺跡で戦ったドラウグルは、これを使っていたんだ!

「あの巨体と力に加えて、魔法も使えるってのか…!? 洒落にならないな…!」
「そうですね…! でも、俺たちにだって、奥の手はありますよ!」
そういうと、シャールさんはミルムルニルに真っすぐ突っ込んでいった!
「シャウトを使えるのは…ドラゴンだけじゃない! ヨル…トール…シュルッ!!」シャールさんが叫び声を上げると、ミルムルニルに負けないほどの力強い炎が巻き起こった!
これは…ファイアブレスのシャウト!?
驚いた! 怪物たちの専売特許だと思っていたあの力は、人間にも使えるものだったのだ!
ミルムルニルのシャウトとシャールさんのシャウトが激突し、互いの炎が大気に消えていく。
「ムゥッ!? 我と同等のスゥームを放つとは!
小さきドヴァーよ、お前と戦えること、誇りに思うぞ!」「そいつは光栄だ。 でも、勝つのは俺たちだ!!」
「私たちの力だって、まだまだこんなものじゃありませんよ」
「そうよ! 従士様は強いんだから!」
続いて、後方に控えていた度葉琴さんが前に躍り出る。
軽やかなステップで崩れた石壁から飛び上がると、空中で体勢を入れ替えながらシャウトを放った!
「フォ…コラー…ディーン!」ゴォォォォォォッ!!今度は猛烈な冷気!
これは…あの時見た、冷気のシャウトだ!
「グオォッ!? 氷のスゥームだと!?」ドラゴンの動きを読みつつ放たれた氷の嵐は、ゆっくりとした勢いながら、ドラゴンの体を確実に捉えた!
フロストブレスの直撃を受けたミルムルニルが大きく怯む。
「どうやらヤツの弱点は氷の魔法のようですね…!」
「よし…! それならッ!!」
作戦は決まった。
衛兵たちとシャールさん、アイラちゃんとでドラゴンの動きを封じ、度葉琴さんのフロストブレス、俺の氷の破壊魔法を叩き込む!
これなら、ヤツに勝てる!!
「おいで! 雷の精霊!!」
アイラちゃんは、精霊の中でも上位の存在である雷の精霊を召喚する。
後で知ったことだが、彼女は優秀な召喚士であり、度葉琴さんのサポート役としてもっとも適任とされ、従者に選ばれたのだそうだ。
「衛兵! 一発でも多く矢を当てなさい!!
あの育ちすぎのトカゲを、地面に叩き落すのよ!!!」
「うぉぉぉぉーッ!!!」
「人間をなめるなぁぁぁーッ!!」
二人の従士の活躍により、全員の士気が上がる。
俺たちは、全員が、全力を振り絞って立ち向かった!
「グアッ!?」ミルムルニルの翼に、雷の精霊が放ったライトニングボルトが直撃した!
翼の痛みが限界に来たのか、ミルムルニルは体勢を崩し、そのまま落下する!
ズドォォォォッ!!!!「うおっ!?」
「やった! あのトカゲ野郎、落ちやがった!!」
「見たか! これがノルドの力、人間の力だ!!!」
ついに、あの巨体を地上に引きずり降ろすことに成功した!
落下したミルムルニルを見て、衛兵たちが歓声をあげる。
「…定命の者たちよ…、そして、小さきドヴァーよ。
よもやお前たちがここまでやろうとは…正直、お前たちを侮っていたようだ」顔や翼から血を流すミルムルニル。 おそらく、勝敗が決するのは近い。
だがその前に、俺は先ほどから気になっていたことを、ミルムルニルに尋ねた。
「…ミルムルニル、とか言ったな。 ドラゴン!」
「ムゥ…?」「お前は…なんで、俺たちに攻撃をしかけた? 目的はなんだ!?」
周囲の全員が「何を言ってる?」という表情をした。
そりゃそうだ。 ドラゴンに論戦をしかけるなど、誰が想像できようか。
だが俺は、構わず言葉を続けた。
「俺たち人間は、必要のない争いはしない。 もちろん、そうではないやつらもいるが…。
でも、少なくともここにいる者たちは、お前との戦いを望んでいるわけじゃない。
俺たちとお前とが争う理由はなんだ!?
なぜお前は、俺たちと戦う!?」
ミルムルニルはその大きな瞳で俺を見ていた。 俺の言葉に、しっかりと耳を傾けていたのだ。
ただの獣なら、こんなことをしているうちに攻撃するはずだ。
やはりドラゴンは、ただの怪物なんかじゃなかった!
そして、ミルムルニルはその大きな口から、ゆっくりと言葉を返してきた。
「…我らドヴァーは、最強の種族を自負する者たちだ。
故に、挑まれた戦いからは決して逃げない。
ここへ来たのは、同胞の気配を感じ取ったからだが、そこでお前たちから挑戦を受けたのだ」そうか…!
ドラゴンの姿に怯えた衛兵が、思わず攻撃してしまったのだろう。
ミルムルニルは、その攻撃を自身への挑戦と受け止めたのだ。
つまり、この戦いは俺たち人間からしかけた『決闘』だったわけだ。
「なるほどな。 だったら、その挑戦はただの勘違いだ。
お前の図体に驚いた衛兵が、勢い余って矢を放っただけで、挑戦しようなんて思ってないんだよ。
今からでも遅くない。 この辺で決闘は終わりってわけにはいかないか!?」
おそらく、これが歴史上初めての、『人間とドラゴンとの停戦交渉』ではないだろうか。
ミルムルニルは、俺の言葉をしっかりと聞き、そして、答えた。
「…それは出来かねる。
一度始めた戦いは、一方が倒れるまで続けるのが我らの掟だからだ。
特に、同胞との戦いであれば、途中で終わるなどあり得ん。
ドヴァーの誇りにかけて、その申し出は断らせてもらおう」
「そうか…そいつは…残念だ」
交渉は決裂した。
どうやらドラゴンというやつは、戦いにおいて極端に自尊心の高い連中らしい。
まるでノルドの戦士を見ているようだ。
それが誤解から始まった戦いであっても、彼らにとって敵に背を向けることは、何よりも恥ずべきことなのだろう。
彼らはノルドのそれと同じく、名誉に生きる戦士なのだ。
「…わかった。 最後にもう一つ教えろ!
お前は俺たちを
『小さきドヴァー』と呼んだな? そして、ここに
同胞の気配がしたと言った!
それは、どういう無意味だ!?」
「どうもこうも、そのままの意味だ。
そこの二人は我らと同じドヴァーの血を引く者たち。 故に、我らはその存在を『小さきドヴァー』と呼んでいる。
そして、我が感じた同胞の気配とは…お前だ。 定命の者よ」「何だって…!?」
『小さきドヴァー』の意味はわかった。
シャウトを使える彼らは、他の人たちと少し違うと感じていたが、その秘密がミルムルニルの言う『ドヴァーの血』なのだろう。
だが、ミルムルニルが感じたドラゴンの気配が『俺』とは…どういうことだ?
「しかし…どうやら勘違いだったようだ。
お前の気配は確かにドヴァーに似ている。 だが、少し違う。
定命の者の中に、稀にそのようなものが現れるが…おそらく、その類であろう。
もしくは…いや、それはあるまい」全く意味がわからない。 俺は人間であって、ドラゴンなどではない。
一体、何だっていうんだ…?
「…さて、おしゃべりはここまでだ。 決着を付けようか…!」「くっ…!」
謎が謎を呼ぶ、とはまさにこのことだ。
だが、今は迷っている時じゃない。
一瞬の油断が命取りになる。 今は目の前の強敵に集中しなければ…!

「ドラゴンと話し合いをしようだなんて…本当に無茶をしますね!」
「ドラゴンと停戦交渉か…! その発想は俺にもなかったなぁ」
「すいません、シャールさん、度葉琴さん…」
ミルムルニルと対峙する俺の隣りに、シャールさんと度葉琴さんが駆け寄る。
「そうそう、俺もノルドだけど、俺は争いを避けるのも勇気だ、って思います。
あなたの行動は、決して臆病者のすることなんかじゃないですよ!」
「そうですよ。 以前あなたが成し遂げた、ホワイトランとイーストマーチとの取引だってそうです。
本気で人を苦しみから救うつもりが…勇気がないと、こんな無茶はできないと思います。
私は、あなたのそういうところ、尊敬していますよ!」
二人は俺の無茶にあきれながらも、その意味に感心していた。
シャールさんは穏やかな笑顔で、度葉琴さんは優しい微笑みで、俺を励まし、勇気付けてくれた。
「むむ…! 従士様とそんなに親し気に…!
うらやまッ…じゃなくて、少しくらいは、私も認めてあげるわ!」
「ありがとう、アイラちゃん!
…あ、俺を警戒してたのって、そういう理由?」
「うっさい! 前見なさいよ!」
こんな状況だというのに、俺たちの間には笑顔すらあった。
目の前にいる、ドラゴンという脅威の存在。
彼らは俺たちと同じか、それ以上に誇りに生きる者たちだった。
だが、そうだとすれば、俺たちが勝つ道理だってあるということだ。
「…なるほど、それがお前たちの強さか。 我らにはない強さだな、小さきドヴァーたちよ。
我もまた、お前たちの強さを忘れていたようだ。
お前たちと戦えることを光栄に思う! 強き者たちよ!」そうだ。 俺たち人間だって、ドラゴンに負けてなんかいない!
これが人間の力、人間の強さなのだから!
決着の時が来た。
シャールさんはミルムルニルの正面に立ち、俺と度葉琴さんは左右に展開する。
後方から、アイラちゃんが雷の精霊を従え、衛兵たちと共にミルムルニルを周囲を囲んだ。
「矢を放てーッ!」
「行って! 雷の精霊っ!!」
周囲から放たれた雷撃と無数の矢が、一斉にミルムルニルの体に降り注ぐ。
雷撃は鱗を焦がし、矢は次々とミルムルニルの体に突き刺さった。
いかにドラゴンの強靭な鱗でも、雷撃で焼かれつつ、近距離から静止状態で矢を受けては、その威力を受けきることは難しいようだ。
「グォォォォォッ!?
ヌゥゥ…この程度で、我が倒れると思うかッ!!」ミルムルニルは大地にしっかりと脚を着き、体勢を立て直すと、大きく息を吸い込んだ。
「ファス…ルー…マールッ!!」ドォォォォッン!!また別のシャウトだと?
ミルムルニルが放った声が、赤い光となって周囲に広がる!
こいつは…!?
「うッ…!? か、体が…」
「う、動けない…なんだ、今のは…?」
光に触れた衛兵たちが、次々と膝を着き、倒れていく。
それまで勇敢だった衛兵たちは、全身から冷や汗を流し、身を震わせていた。
「これは…『恐怖』の魔法!? そんな効果のシャウトもあるのか!」
恐怖に捉われた衛兵たちは、全員が戦闘不能に陥った。
イリレスさんとアイラちゃんも影響を受けたのか、立ち上がってはいるが、動けないようだ。
「これで…存分に戦えるな、小さきドヴァーたち。 そしてドヴァーに似る者よ!
さぁ…次の攻撃で決着としよう!」「…いいだろう、受けて立つぜ! ミルムルニル!!」
俺は右手に明王を構え、左手には氷の魔法を構える。
シャールさんと度葉琴さんも、それぞれ武器を構えてミルムルニルと睨み合った。
ほんのわずかな静寂。
張り詰めた空気が周囲を包み、辺りの風が一瞬止む。
ほんの数秒の時間のはずなのに、とても長い時間に感じた。
パチィンッ!!近くで燃えていた木材から、火が弾けた!
それを合図に、俺たち3人は一斉にミルムルニルに跳びかかる!
『フォス…ロ…ダーッ!!』「ヌオォォッ!?」シャールさんと度葉琴さんは、左右から同時に衝撃波を放った!
ブリーク・フォール墓地で見た、あのシャウトだ!
強烈な衝撃波の挟撃で、ミルムルニルの動きが止まる!!
「い・ま・だーッ!!」動きの止まった一瞬の隙に、俺はミルムルニルの懐に飛び込んだ!
ザンッ!!明王の一閃を受け、ミルムルニルの腹から鮮血が吹きあがる!!
「グワァアッ!!!?」
「これで…最後だッ!!!!」ズドォォォォォォォッ!!!!!
「グ…オォォォォオオオ…」ミルムルニルの巨体が、ゆっくりと倒れ伏す。
最強を自負する種族が、今まさに人間の手によって倒された。
…俺たちの勝利だ!!「み、見事だ…! 左右同時の…スゥームに…加えて、この強…烈な…氷の魔法…!
我が鱗も…これには…耐えら…れ…なかった…ようだ…ッ!」ミルムルニルは、腹の傷口に強烈な氷の魔法を撃ち込まれ、体の内側から氷漬けされたのだった。
いかにドラゴンといえど、鱗を剥がされた傷口に、マジカをたっぷりと注ぎ込んだ氷の魔法を撃ち込まれては、ひとたまりもない。
「すまない…ミルムルニル。 お前は手加減できる相手じゃなかったんでな…」
彼はただ、自身の誇りのために挑戦を受けただけだった。
戦いが決闘だとわかった時から、俺はミルムルニルを殺すつもりなどなかったが、その決闘に応えないことは、彼の誇りを傷つけることになると思ったのだ。
その行動には決して悪意はない。 この戦いは、ただひたすらに誇りに生きた結果であった。
そんな彼の生き様に、俺は敬意すら抱いていた。
「気に…するな。 我らドヴァーは…不死の魂を持つ…存在だ…!
肉体が…滅んだ…程度で、ドヴァーは……な、何っ!?」「!? な、何だ!?」
ゴォォォォォォォォォォ…言葉の壁で感じた風。
いや、これはあの時感じた風より、ずっと強く…そして、凶暴だ。
「こ…これは…? まさか、お前は…ッ!?」ほんの少しだが、俺はドラゴンとわかり合えたと思っていた。
「お、おい! ミルムルニル! これは何だ!?」
だが現実は、そんなことすら許してはくれなかった。
「俺は…一体、何者なんだッ!!?」運命は…再び俺を弄び始めた。
「グォォッ!? ド、ドヴァーキン!? や、止めろォッ!!!?」
「ミルムルニル!? うわッ!!?」
ゴォォォォォォォォォォッ!!!!
何が起こったのか。
突然、言葉の壁で感じたあの『風』がミルムルニルの体から吹いたかと思うと、その風が俺の中へと入っていったのだ。
巻き起こる風の中、ミルムルニルの体は燃え上がるように消えていき、風が止んだ頃には骨だけになっていた。
「い、今のはなんだ!?」
「ドラゴンの…力を、吸収したのか? お前は、一体…?」
恐怖のシャウトの影響から解放され、衛兵たちが集まってきた。
口々に俺の身に起きた現象を不思議がっている。
どうやらさっきの風は、言葉の壁の時と違って他のみんなにも認識できていたようだ。
「信じられない…!
お前は…伝説の『ドラゴンボーン』だ…!!」「『ドラゴンボーン』!?」
衛兵の一人が口にした、『ドラゴンボーン』という言葉。
それが一体何なのか。
そして、俺にとってその意味が、本来のそれよりも遥かに重いものであることに、この時はまだ気が付かなかった。
次回予告
第24話 叙任! ホワイトランの従士と従者。
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- 2016/08/26(金) 03:21:49|
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